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いたずら電話がエスカレートしていく!
一見30歳前後だろうか。A子が白いマスクをかけ、2歳くらいの男の子と5歳くらいの女の子を連れて麻生女性探偵社を訪ねてきたのは午前10時ごろだった。
「夫の暴力がひどくて、もう家にいられません・・・」
彼女が泣き崩れると同時に子供達も泣き出したので、私は途方に暮れるしかなかった。
話によると、上の子供がおなかにいるころから、週に2.3回無言電話があったらしい。最初はいたずら電話と思って気にしなかったが、そのうち女性の声で「ご主人は帰ってますか?」と聞かれ、「まだ帰っていません。」と答えると、ガチャンと切れる電話がときどきあったという。夫にその話をすると、「単なる間違い電話じゃないのか?」と軽く流されるだけだった。
それから3年ほど経過し、下の子が生まれたころから、いたずら電話が毎日50回以上にどんどんエスカレート。しかも違う女性2,3人から、「いい加減に別れたら?」「あんた本当にしつこいね!」といった電話がかかってくるようになった。
夫に話をすると、「俺には関係ない。お前が浮気している相手の女房からじゃないのか?」とA子を責め、そのうちに暴力を振るうようになった。
とにかく夫が帰宅すると、けんかと暴力の毎日という。私は彼女に、夫の素行調査を勧めた。
夫の素行調査開始
夫は父親が創業した会社の二代目として、専務取締役の肩書きを持ち、主に営業を担当している。
その日は朝9時ごろに自宅を出た。出社1時間後には外出、得意先を一軒回る。昼前にあるマンションの一室に入った。表札に名前が無い。午後2時過ぎに部屋から出てきた。マンションの下から部屋を見上げると、20歳前後の女性が手を振っている。私はとっさにカメラのシャッターを切った。
マンションを出てから得意先2軒回って帰社。午後6時ごろ会社を出て、ホテルの駐車場に車を停めた。1階のコーヒーラウンジで誰か待ち合わせのようだ。5分後、ロングヘヤーの25歳前後の女性が鮮やかなバイオレットのスーツ姿で登場。明らかに昼間の女性ではない。おそらくクラブかスナックの"同伴”だろう。その後ふたりは小料理屋に行き、、午後8時ごろにSビルのクラブに入っていった。
そして待つこと約2時間。店を出て2軒目のクラブへ。12時過ぎに数人のホステスに見送られて店を出て来た。そしてホテルに戻って車を出し、路上で駐車している。すると、先ほど彼を見送ったホステスのひとりが車に乗り込んだ。車は15分ほど走り、マンションの前で停車、ふたりで8階の部屋へ入っていく。−−−昼間の女性ではない、ということは最低2人と女性関係があるということだ・・・。
午前3時ごろ、彼はマンションから出て自宅へ戻っていった。
約2時間の追跡調査の結果、夫は5人女性関係があり、それぞれの女性宅へ出入りしていることがわかった。驚いたことに、そのうち2人には子供まで産ませている。依頼者のA子に早速報告しようかと思ったが、いたずら電話の件が未解決のままだったので、もう少し深く調査することになった。
調べると出る出る!意外な事実
B子23歳。元OLでA子の夫とは5年前から交際を始め、19歳で子供を産んだ。A子に子供が産まれて約半年後である。
C子26歳。元看護婦。A子の夫とはコンパニオン時代に知り合って深い関係になり、1歳半の子供がいる。
D子28歳。離婚歴あり。現在クラブのホステス。
他の2人は”つまみ食い”程度である。
B子は当初、A子の夫が結婚していることを知らずに交際していた。しかし子供ができたので、一緒になってほしいと頼んだが「もう少し待って」と言い訳ばかりされていた。妊娠6ヶ月を過ぎたころに初めて妻の存在を聞かされた。『離婚の話し合いをしている最中で、必ず一緒になる』という彼の言葉を信じて出産。しかし、家には週1・2回しか来ないし、生活費も月10万円程度しか入れてくれない。彼の携帯電話に入っていた電話番号に連絡してみると、次々に女性が出てくる。B子は育児疲れと彼の女性問題でノイローゼになってしまった。いつしか、知ってしまった電話番号に何度も無言電話をするようになっていた。
C子の場合もよく似たケース。一緒になろうと言って関係を結び、彼女の部屋に来るようになった。地方から出てきて看護婦になった彼女はあまり友人がおらず、週1.2回彼が来てくれることに幸せを感じていたという。一度子供を堕ろした経験があったので、2度目の妊娠時には産むと言い張った。しかし彼は、『産むな』の一点張り。以来、部屋に来る回数が減っていった。C子が彼の自宅に無言電話やいたずら電話を始めたのはそのころからだ。
D子は、彼にA子という妻がいることを知って交際していた。しかし、彼がいない時は無言電話やいたずら電話がかかってくる。彼女は電話の相手がA子だと考えていた。ある日朝方まで続く無言電話に腹を立て、彼の自宅に電話をし、A子に「あんたねえ、いい加減にしてよ!文句があるならいつでも会ってやるよ!」と言ってガチャンと切った。そんな状態が約1年続いていた。
B子とC子は不安と悔しさからA子に無言電話をかける。D子はA子の仕業だと思い込んで仕返しに電話をかける。まさしく夫のふがいなさから端を発した泥試合であった。夫はもともと気が弱いのだろう。いやなことがあれば逃避するくせがある。あるいは暴力を振るうかであった。
約1ヵ月後、私はA子に報告書と証拠データを渡した。彼女は放心状態であったがしばらくして「私、別れたほうがいいですよね。」私は「決断することが今のあなたに一番大事なことだと思う。」と静かに言った。
その後、A子と彼女の母親は、私の紹介した弁護士事務所で調停の申し込みをした。B子も子供認知裁判の手続きを行なったと聞いた。
不思議なことにA子とB子、C子の3人は彼と別れて互いに連絡を取り合い、今では仲が良い関係だという・・・。 |
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